JavaScriptとマルチスレッド:なぜJavaScriptはマルチスレッドをサポートしていないのか?

2024-04-06

JavaScriptとマルチスレッド:なぜJavaScriptはマルチスレッドをサポートしていないのか?

マルチスレッドとは、複数の処理を同時に実行する処理方法です。マルチスレッドをサポートする言語では、複数のタスクを同時に実行し、処理速度を向上させることができます。

JavaScriptがマルチスレッドをサポートしていない理由はいくつかあります。

  • 歴史的な理由: JavaScriptは当初、単純なスクリプティング言語として設計されました。当時はマルチスレッドの必要性がまだ認識されていませんでした。
  • 複雑性: マルチスレッドは、コードの複雑さを増し、デバッグを困難にする可能性があります。JavaScriptは、初心者でも使いやすい言語として設計されており、マルチスレッドの複雑さを避けることで、その利点を維持しようとしています。
  • セキュリティ: マルチスレッドは、競合状態と呼ばれる問題を引き起こす可能性があります。競合状態は、複数のスレッドが同時に同じデータにアクセスしようとする場合に発生し、予期せぬ結果を引き起こす可能性があります。JavaScriptは、安全性を重視しており、競合状態のリスクを避けるためにマルチスレッドをサポートしないという選択をしたと考えられます。

JavaScriptにおけるマルチスレッドの代替手段

  • イベントループ: JavaScriptはイベント駆動型の言語であり、イベントループと呼ばれる仕組みによって処理を実行します。イベントループは、ユーザー入力、ネットワークリクエスト、タイマーなどのイベントを処理し、それに応じてJavaScriptコードを実行します。イベントループは、ある程度マルチスレッド処理をシミュレートすることができます。
  • Web Worker: Web Workerは、JavaScriptコードを別のスレッドで実行するためのAPIです。Web Workerを使用することで、メインスレッドの処理を妨げることなく、バックグラウンドで処理を実行することができます。
  • サーバサイド処理: マルチスレッド処理が必要な場合は、JavaScriptではなく、Node.jsなどのサーバサイド言語を使用することができます。Node.jsは、マルチスレッド処理を効率的に実行できる環境を提供します。

JavaScriptは、マルチスレッドをネイティブでサポートしていないという制限があります。しかし、イベントループやWeb Workerなどの代替手段を使用することで、マルチスレッド処理をある程度実現することができます。

JavaScriptでマルチスレッド処理を行う場合は、これらの代替手段のメリットとデメリットを理解した上で、適切な方法を選択することが重要です。

補足

  • JavaScriptは、今後マルチスレッドをネイティブでサポートする可能性があります。ECMAScript 2020では、SharedArrayBufferと呼ばれる新しいAPIが導入されました。SharedArrayBufferは、複数のスレッド間でデータを共有するための仕組みであり、将来的にマルチスレッド処理をサポートするための基盤となる可能性があります。
  • WebAssemblyは、JavaScriptとC/C++などの言語を連携させるための技術です。WebAssemblyはマルチスレッド処理をサポートしており、JavaScriptでマルチスレッド処理が必要な場合は、WebAssemblyを使用する方法も検討することができます。



サンプルコード:Web Workerを使用したマルチスレッド処理

// メインスレッドのコード
const worker = new Worker("worker.js");

worker.onmessage = (event) => {
  // ワーカースレッドから受け取ったメッセージを処理
  console.log("Received message from worker:", event.data);
};

worker.postMessage({
  // ワーカースレッドに送信するデータ
  message: "Hello from main thread!"
});

// ワーカースレッドのコード
self.addEventListener("message", (event) => {
  // メインスレッドから受け取ったメッセージを処理
  console.log("Received message from main thread:", event.data);

  // ワーカースレッドからメインスレッドにメッセージを送信
  self.postMessage({
    message: "Hello from worker thread!"
  });
});
  1. メインスレッドは、new Worker("worker.js")を使用してワーカースレッドを作成します。
  2. ワーカースレッドが作成されると、worker.onmessageイベントハンドラが登録されます。このイベントハンドラは、ワーカースレッドからメッセージを受け取ったときに呼び出されます。
  3. メインスレッドは、worker.postMessage()を使用して、ワーカースレッドにメッセージを送信します。
  4. ワーカースレッドは、self.addEventListener("message", (event) => { ... })を使用して、メインスレッドからのメッセージを受け取ります。

このコードを実行すると、コンソールに以下のメッセージが表示されます。

Received message from main thread: Hello from main thread!
Received message from worker thread: Hello from worker thread!

補足

  • このコードは、単純な例です。実際のアプリケーションでは、より複雑な処理を行うことができます。
  • Web Workerは、JavaScriptコードだけでなく、WebAssemblyコードも実行することができます。
  • Web Workerを使用する場合は、セキュリティに注意する必要があります。ワーカースレッドは、メインスレッドとは異なるセキュリティコンテキストで実行されます。



JavaScriptでマルチスレッド処理を行うその他の方法

setTimeoutsetIntervalを使用して、一定時間後に処理を実行することができます。これらの関数は、擬似的なマルチスレッド処理を実現することができます。

// 1秒後に処理を実行
setTimeout(() => {
  // 処理内容
}, 1000);

// 1秒間隔で処理を実行
setInterval(() => {
  // 処理内容
}, 1000);

Promiseを使用して、非同期処理を処理することができます。Promiseは、処理完了後に別の処理を実行することができます。

const promise = new Promise((resolve, reject) => {
  // 処理内容
  resolve();
});

promise.then(() => {
  // 処理完了後の処理
});

async / awaitを使用して、非同期処理をより簡単に処理することができます。async / awaitは、Promiseをベースとした機能です。

async function myFunction() {
  // 処理内容
  await someAsyncFunction();
  // 処理内容
}

myFunction();

サードパーティライブラリ

RxJSなどのサードパーティライブラリを使用して、マルチスレッド処理を行うことができます。これらのライブラリは、マルチスレッド処理をより簡単に実現するための機能を提供します。

注意事項

  • 上記の方法を使用する場合は、処理内容によっては競合状態が発生する可能性があります。競合状態を防ぐためには、適切なロック機構を使用する必要があります。
  • マルチスレッド処理は、ブラウザの性能に依存します。ブラウザの性能が低い場合は、マルチスレッド処理を行うことで処理速度が遅くなる可能性があります。

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