TypeScriptでプロパティを隠蔽する3つの方法:プライベートセッター、readonly、デコレータ

2024-07-27

TypeScriptにおけるプライベートセッター、ゲッター、アクセサの解説

TypeScriptでは、クラスのプロパティのアクセス制御を強化するために、アクセサと呼ばれる機能を提供しています。アクセサは、プロパティのゲッターセッターを定義することで、プロパティの読み書き方法を制御できます。

ゲッターは、プロパティの値を取得するために使用されます。一方、セッターは、プロパティの値を設定するために使用されます。アクセサは、プロパティ名の前にgetまたはsetキーワードを付けて定義します。

プライベートセッターは、セッターをprivateキーワードで修飾することで実現できます。これにより、セッターはクラス内からのみ呼び出すことができ、外部からのプロパティ値の直接変更を防止できます。

class Person {
  private _name: string;

  public get name(): string {
    return this._name;
  }

  public set name(newName: string) {
    // 新しい名前を検証するロジック
    if (!newName.trim()) {
      throw new Error("名前は空文字にしてはいけません。");
    }

    this._name = newName;
  }
}

この例では、Personクラスは_nameというプライベートプロパティを持ちます。このプロパティは、nameというゲッターとセッターを通してのみアクセスできます。セッターはプライベートなので、Personクラスの外からは呼び出すことができません。

アクセサの利点

  • ロジックの追加: プロパティの読み書き処理にロジックを追加できます。
  • 検証: プロパティに設定される値を検証し、不正な値を排除できます。
  • カプセル化: プロパティの内部実装を隠蔽し、データの整合性を保ちます。
  • プライベートセッターを使用すると、デバッグが難しくなる場合があります。
  • アクセサを使用すると、コードが冗長になる場合があります。

プライベートセッターは、TypeScriptにおける強力な機能ですが、使いどころを誤るとコードが複雑になる可能性があります。アクセサを使用する前に、そのメリットとデメリットを慎重に検討することが重要です。

  • アクセサは、デコレータを使用してさらに拡張できます。
  • TypeScriptには、readonlyキーワードを使用してプロパティを書き込み不可にする機能もあります。



class Employee {
  private _id: number;
  private _name: string;
  private _department: string;
  private _salary: number;

  constructor(id: number, name: string, department: string, salary: number) {
    this._id = id;
    this._name = name;
    this._department = department;
    this._salary = salary;
  }

  public get id(): number {
    return this._id;
  }

  public get name(): string {
    return this._name;
  }

  public set name(newName: string) {
    if (!newName.trim()) {
      throw new Error("名前は空文字にしてはいけません。");
    }

    this._name = newName;
  }

  public get department(): string {
    return this._department;
  }

  public set department(newDepartment: string) {
    if (!newDepartment.trim()) {
      throw new Error("部署は空文字にしてはいけません。");
    }

    this._department = newDepartment;
  }

  public get salary(): number {
    return this._salary;
  }

  private set salary(newSalary: number) {
    if (newSalary < 0) {
      throw new Error("給与は負の値にはできません。");
    }

    this._salary = newSalary;
  }

  public raiseSalary(rate: number): void {
    this.salary = this.salary * (1 + rate);
  }
}

説明

このコードは、以下の機能を持つEmployeeクラスを実装しています。

  • raiseSalaryメソッドを使用して、給与を昇給させる
  • 給与のプロパティにプライベートセッターを設定し、負の値を設定できないようにする
  • 名前と部署のプロパティにプライベートセッターを設定し、値の検証を行う
  • 社員ID、名前、部署、給与を管理するプロパティを持つ

使い方

const employee = new Employee(1, "山田太郎", "営業部", 300000);

console.log(`社員ID: ${employee.id}`); // 社員ID: 1
console.log(`名前: ${employee.name}`); // 名前: 山田太郎
console.log(`部署: ${employee.department}`); // 部署: 営業部
console.log(`給与: ${employee.salary}`); // 給与: 300000

employee.name = "佐藤次郎"; // 名前を変更
console.log(`名前: ${employee.name}`); // 名前: 佐藤次郎

employee.department = ""; // 部署を空文字に設定しようとするとエラー
// Error: 部署は空文字にしてはいけません。

employee.salary = -10000; // 給与を負の値に設定しようとするとエラー
// Error: 給与は負の値にはできません。

employee.raiseSalary(0.1); // 給与を10%昇給
console.log(`給与: ${employee.salary}`); // 給与: 330000

ポイント

  • raiseSalaryメソッドを使用して、給与を昇給するロジックを追加しています。
  • アクセサを使用して、プロパティの読み書きをカプセル化しています。
  • プライベートセッターを使用して、プロパティ値の検証と制御を行っています。



プライベートセッター以外の方法

readonlyキーワード

readonlyキーワードを使用して、プロパティを書き込み不可にすることができます。これにより、プロパティの値は一度設定されると変更できなくなります。

class Employee {
  private _id: number;
  private readonly _name: string;
  private readonly _department: string;
  private _salary: number;

  constructor(id: number, name: string, department: string, salary: number) {
    this._id = id;
    this._name = name;
    this._department = department;
    this._salary = salary;
  }

  public get id(): number {
    return this._id;
  }

  public get name(): string {
    return this._name;
  }

  public get department(): string {
    return this._department;
  }

  public get salary(): number {
    return this._salary;
  }
}

アクセサなしのプロパティ

アクセサを使用せずに、プロパティをプライベートにすることもできます。ただし、この方法ではプロパティの読み書きを制御することはできません。

class Employee {
  private _id: number;
  private _name: string;
  private _department: string;
  private _salary: number;

  constructor(id: number, name: string, department: string, salary: number) {
    this._id = id;
    this._name = name;
    this._department = department;
    this._salary = salary;
  }
}

デコレータ

デコレータを使用して、プロパティのアクセス制御を拡張することもできます。デコレータは、クラスやプロパティに装飾を追加するための機能です。

class Employee {
  private _id: number;
  private _name: string;
  private _department: string;
  private _salary: number;

  constructor(id: number, name: string, department: string, salary: number) {
    this._id = id;
    this._name = name;
    this._department = department;
    this._salary = salary;
  }

  @validateName
  public get name(): string {
    return this._name;
  }

  @validateDepartment
  public get department(): string {
    return this._department;
  }

  @validateSalary
  public get salary(): number {
    return this._salary;
  }
}

function validateName(target: any, propertyKey: string, descriptor: PropertyDescriptor) {
  const originalGetter = descriptor.get;
  descriptor.get = function(): string {
    const value = originalGetter.apply(this);
    if (!value.trim()) {
      throw new Error("名前は空文字にしてはいけません。");
    }

    return value;
  };
}

function validateDepartment(target: any, propertyKey: string, descriptor: PropertyDescriptor) {
  const originalGetter = descriptor.get;
  descriptor.get = function(): string {
    const value = originalGetter.apply(this);
    if (!value.trim()) {
      throw new Error("部署は空文字にしてはいけません。");
    }

    return value;
  };
}

function validateSalary(target: any, propertyKey: string, descriptor: PropertyDescriptor) {
  const originalGetter = descriptor.get;
  descriptor.get = function(): number {
    const value = originalGetter.apply(this);
    if (value < 0) {
      throw new Error("給与は負の値にはできません。");
    }

    return value;
  };
}

それぞれの方法の利点と欠点

方法利点欠点
プライベートセッタープロパティの値を検証および制御できるコードが冗長になる可能性がある
readonlyキーワードプロパティの値を書き込み不可にできるプロパティの値を変更できない
アクセサなしのプロパティコードがシンプルになるプロパティの読み書きを制御できない
デコレータプロパティのアクセス制御を柔軟に拡張できるコードが複雑になる可能性がある

typescript setter getter-setter



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