TypeScriptとAngularでデータ共有をマスターする:値渡しと参照渡しを超えて

2024-06-08

TypeScriptとAngularは、どちらもJavaScriptベースの開発環境ですが、値渡しと参照渡しの概念は、ネイティブのJavaScriptと同様に適用されます。この概念を理解することは、コードの動作と、関数間でのデータ共有方法を理解する上で重要です。

値渡しは、関数の引数として渡される値のコピーが作成されることを意味します。つまり、関数内で引数の値を変更しても、元の変数の値には影響しません。これは、プリミティブ型(数値、文字列、ブール値など)に当てはまります。

function add(a: number, b: number): number {
  b = 100; // 関数内でbの値を変更
  return a + b;
}

let x = 5;
let y = 20;
let sum = add(x, y);
console.log(x); // 5 (元の値のまま)
console.log(sum); // 105 (関数内でのbの値が反映)

上記の例では、add関数にxyのコピーが渡されます。関数内でbの値を変更しても、x変数の元の値には影響しません。

参照渡しは、関数の引数として渡されるオブジェクトへの参照が渡されることを意味します。つまり、関数内でオブジェクトのプロパティを変更すると、元のオブジェクトも変更されます。これは、オブジェクトや配列などの参照型に当てはまります。

function updatePerson(person: { name: string, age: number }) {
  person.name = "John Doe";
  person.age = 30;
}

let person = { name: "Jane Doe", age: 25 };
updatePerson(person);
console.log(person.name); // John Doe (関数内での変更が反映)
console.log(person.age); // 30 (関数内での変更が反映)

上記の例では、updatePerson関数にpersonオブジェクトへの参照が渡されます。関数内でオブジェクトのプロパティを変更すると、person変数の元のオブジェクトも変更されます。

Angularにおける値渡しと参照渡し

Angularでは、コンポーネント間でデータを共有するために、様々な方法が提供されています。コンポーネント間のデータ共有における値渡しと参照渡しの概念は、ネイティブのJavaScriptと同様に適用されます。

  • コンポーネント入力と出力: コンポーネント入力と出力は、コンポーネント間でプリミティブ型と参照型のデータを値渡しする方法です。コンポーネント入力は、親コンポーネントから子コンポーネントへのデータの送信に使用されます。コンポーネント出力は、子コンポーネントから親コンポーネントへのデータの送信に使用されます。
  • サービス: サービスは、コンポーネント間でデータを共有するための共有可能なクラスです。サービスは、値渡しと参照渡しの両方を使用してデータをコンポーネントに提供できます。
  • Reactive Forms: Reactive Formsは、コンポーネント間でデータを共有するためのフォーム管理ライブラリです。Reactive Formsは、値渡しを使用してフォームデータをコンポーネントに提供します。

値渡しと参照渡しの概念は、TypeScriptとAngularにおけるJavaScriptプログラミングにおいて重要です。これらの概念を理解することで、コードの動作と、関数間およびコンポーネント間でのデータ共有方法をよりよく理解することができます。




    TypeScriptとAngularにおける値渡しと参照渡しのサンプルコード

    値渡し

    以下の例は、値渡しと参照渡しの違いをプリミティブ型を使用して示しています。

    function add(a: number, b: number): number {
      b = 100; // 関数内でbの値を変更
      return a + b;
    }
    
    let x = 5;
    let y = 20;
    let sum = add(x, y);
    console.log(x); // 5 (元の値のまま)
    console.log(sum); // 105 (関数内でのbの値が反映)
    

    参照渡し

    function updatePerson(person: { name: string, age: number }) {
      person.name = "John Doe";
      person.age = 30;
    }
    
    let person = { name: "Jane Doe", age: 25 };
    updatePerson(person);
    console.log(person.name); // John Doe (関数内での変更が反映)
    console.log(person.age); // 30 (関数内での変更が反映)
    

    以下の例は、Angularコンポーネント間での値渡しと参照渡しの違いを示しています。

    @Component({
      selector: 'app-parent',
      template: `
        <input type="text" [(ngModel)]="name">
        <button (click)="updateName()">Update Name</button>
        <p>Name: {{ name }}</p>
      `
    })
    export class ParentComponent {
      name = 'John Doe';
    
      updateName() {
        this.name = 'Jane Doe';
      }
    }
    
    @Component({
      selector: 'app-child',
      template: `
        <input type="text" [(ngModel)]="name">
      `
    })
    export class ChildComponent {
      name: string;
    
      constructor(private parent: ParentComponent) {
        this.name = parent.name;
      }
    }
    

    この例では、app-childコンポーネントはapp-parentコンポーネントのnameプロパティにバインドされています。しかし、このバインディングは値渡しであるため、app-childコンポーネントでnameプロパティを変更しても、app-parentコンポーネントのnameプロパティには影響しません。

    @Component({
      selector: 'app-parent',
      template: `
        <app-child [person]="person"></app-child>
        <button (click)="updatePerson()">Update Person</button>
      `
    })
    export class ParentComponent {
      person = { name: 'John Doe', age: 30 };
    
      updatePerson() {
        this.person.name = 'Jane Doe';
        this.person.age = 35;
      }
    }
    
    @Component({
      selector: 'app-child',
      template: `
        <p>Name: {{ person.name }}</p>
        <p>Age: {{ person.age }}</p>
      `
    })
    export class ChildComponent {
      person: { name: string, age: number };
    
      constructor(private parent: ParentComponent) {
        this.person = parent.person;
      }
    }
    

    この例では、app-childコンポーネントにapp-parentコンポーネントのpersonオブジェクトへの参照が渡されます。そのため、app-childコンポーネントでpersonオブジェクトのプロパティを変更すると、app-parentコンポーネントの元のpersonオブジェクトも変更されます。

    これらの例は、TypeScriptとAngularにおける値渡しと参照渡しの概念を理解するための出発点となるものです。これらの概念をより深く理解するために、さらに調査し、実験することをお勧めします




    TypeScriptとAngularにおけるデータ共有のその他の方法

    例:

    @Injectable({
      providedIn: 'root'
    })
    export class DataService {
      private data: any;
    
      constructor() { }
    
      setData(data: any) {
        this.data = data;
      }
    
      getData() {
        return this.data;
      }
    }
    
    @Component({
      selector: 'app-parent',
      template: `
        <button (click)="onClick()">Share Data</button>
      `
    })
    export class ParentComponent {
      constructor(private dataService: DataService) { }
    
      onClick() {
        const data = { name: 'John Doe', age: 30 };
        this.dataService.setData(data);
      }
    }
    
    @Component({
      selector: 'app-child',
      template: `
        <p>Data: {{ data | json }}</p>
      `
    })
    export class ChildComponent {
      data: any;
    
      constructor(private dataService: DataService) {
        this.data = this.dataService.getData();
      }
    }
    
    @Component({
      selector: 'app-parent',
      template: `
        <form [formGroup]="form">
          <input type="text" formControlName="name">
          <button type="button" (click)="onSubmit()">Submit</button>
        </form>
      `
    })
    export class ParentComponent {
      form = new FormGroup({
        name: new FormControl('')
      });
    
      onSubmit() {
        const data = this.form.value;
        console.log(data); // { name: '...' }
      }
    }
    
    @Component({
      selector: 'app-child',
      template: `
        <p>Name: {{ name }}</p>
      `
    })
    export class ChildComponent {
      name: string;
    
      constructor(private parent: ParentComponent) {
        this.name = parent.form.get('name').value;
      }
    }
    

    RxJSは、Reactive Programmingを実装するためのライブラリです。RxJSを使用して、コンポーネント間でイベントやデータをストリーム配信できます。

    @Component({
      selector: 'app-parent',
      template: `
        <button (click)="onClick()">Send Event</button>
      `
    })
    export class ParentComponent {
      constructor(private subject: Subject<any>) { }
    
      onClick() {
        this.subject.next({ name: 'John Doe', age: 30 });
      }
    }
    
    @Component({
      selector: 'app-child',
      template: `
        <p>Data: {{ data | json }}</p>
      `
    })
    export class ChildComponent {
      data: any;
    
      constructor(private parent: ParentComponent) {
        parent.subject.subscribe(data => this.data = data);
      }
    }
    

    値渡しと参照渡しに加えて、TypeScriptとAngularでデータをコンポーネント間で共有するその他の方法がいくつかあります。使用する方法は、特定の要件によって異なります。

    • サービスは、コンポーネント間で複雑なデータを共有する場合に適しています。
    • Reactive Formsは、フォームデータを共有する場合に適しています。

    typescript angular


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