TypeScriptにおけるジェネリック型定数とは? 汎用的なコードで型安全性を高める
TypeScriptにおけるジェネリック型定数宣言
これらの機能を組み合わせることで、ジェネリック型定数を宣言することができます。これは、型パラメータに基づいて値の型が決まる定数です。
具体的な例
function identity<T>(value: T): T {
return value;
}
const num: number = identity(10); // num は number 型になります
const str: string = identity('Hello'); // str は string 型になります
上記の例では、identity
関数は、ジェネリック型パラメータ T
を持つ関数として定義されています。この関数は、引数として渡された値をそのまま返します。
num
と str
という定数は、それぞれ identity
関数を使って宣言されています。identity
関数に渡される値の型によって、num
と str
の型が決まります。
つまり、num
は identity(10)
の戻り値であるため、number
型になります。同様に、str
は identity('Hello')
の戻り値であるため、string
型になります。
ジェネリック型定数の利点
ジェネリック型定数を使用する利点は次のとおりです。
- コードの読みやすさを向上させる: コードがより汎用化され、意図が明確になります。
- 型安全性を向上させる: コンパイラは、ジェネリック型パラメータに基づいて型の整合性をチェックするため、誤った型の値が定数に代入されるのを防ぐことができます。
- コードの繰り返しを減らす: 同じ操作を異なる型に対して何度も記述する必要がなくなります。
ジェネリック型定数をを使用する際には、以下の点に注意する必要があります。
- テストを書く: ジェネリック型定数が正しく動作することを確認するために、テストを書くことが重要です。
- null 許容性を考慮する: ジェネリック型定数が
null
許容値であるかどうかを明示的に指定する必要があります。 - 型パラメータに制約を設ける: 型パラメータに何らかの制約を設けないと、コンパイラが型の整合性をチェックできなくなります。
例 1: ジェネリック型定数を使用してスタックを実装する
class Stack<T> {
private items: T[] = [];
push(item: T): void {
this.items.push(item);
}
pop(): T | undefined {
return this.items.pop();
}
}
const numStack = new Stack<number>();
numStack.push(1);
numStack.push(2);
console.log(numStack.pop()); // 2 を出力
console.log(numStack.pop()); // 1 を出力
const strStack = new Stack<string>();
strStack.push('Hello');
strStack.push('World');
console.log(strStack.pop()); // 'World' を出力
console.log(strStack.pop()); // 'Hello' を出力
この例では、Stack
というジェネリック型クラスを定義しています。このクラスは、スタックのデータ構造を実装します。T
という型パラメータは、スタックに格納される要素の型を表します。
numStack
と strStack
という変数は、それぞれ number
型と string
型の要素を格納するスタックとして宣言されています。
例 2: ジェネリック型定数を使用して最大値と最小値を求める
function maxAndMin<T>(values: T[]): { max: T; min: T } {
if (values.length === 0) {
throw new Error('引数が空です');
}
let max = values[0];
let min = values[0];
for (const value of values) {
if (value > max) {
max = value;
} else if (value < min) {
min = value;
}
}
return { max, min };
}
const numbers = [1, 2, 3, 4, 5];
const result = maxAndMin(numbers);
console.log(result.max); // 5 を出力
console.log(result.min); // 1 を出力
const strings = ['Hello', 'World', 'JavaScript'];
const result2 = maxAndMin(strings);
console.log(result2.max); // 'World' を出力
console.log(result2.min); // 'Hello' を出力
この例では、maxAndMin
というジェネリック型関数を定義しています。この関数は、配列に含まれる要素の最大値と最小値を求めます。T
という型パラメータは、配列に含まれる要素の型を表します。
型パラメータに制約を設ける
ジェネリック型パラメータに制約を設けることで、その型パラメータが満たす必要がある条件を指定できます。これにより、コードの型安全性を向上させることができます。
interface Lengthy {
length: number;
}
function identity<T extends Lengthy>(value: T): T {
return value;
}
const num: number = identity({ length: 10, value: 10 }); // 型エラー
const str: string = identity({ length: 5, value: 'Hello' }); // OK
この例では、Lengthy
というインターフェースを定義しています。このインターフェースは、length
というプロパティを持つオブジェクトを表します。
identity
関数は、T
という型パラメータを持つ関数として定義されています。この型パラメータは、Lengthy
インターフェースを実装する必要があります。
num
という定数は、identity
関数を使って length
プロパティと value
プロパティを持つオブジェクトを代入しようとします。しかし、number
型は Lengthy
インターフェースを実装していないため、型エラーが発生します。
デフォルト値を指定する
ジェネリック型パラメータにデフォルト値を指定することで、その型パラメータの既定値を定義できます。
function swap<T>(a: T, b: T, defaultValue: T = a): [T, T] {
return [b, a];
}
const result1 = swap(1, 2); // [2, 1] を出力
const result2 = swap('Hello', 'World'); // ['World', 'Hello'] を出力
const result3 = swap(10, 20, 5); // [20, 10] を出力
この例では、swap
というジェネリック型関数を定義しています。この関数は、2つの値を入れ替えます。T
という型パラメータは、2つの値の型を表します。
defaultValue
というパラメータは、2つの値を入れ替えた後に返される既定値を表します。このパラメータには、デフォルト値として a
が指定されています。
result1
と result2
は、swap
関数を呼び出して2つの値を入れ替えています。defaultValue
パラメータには値を指定していないため、デフォルト値の a
が使用されます。
result3
は、swap
関数を呼び出して2つの値を入れ替え、さらに defaultValue
パラメータに 5
という値を指定しています。このため、2つの値を入れ替えた後に 5
が返されます。
型推論を活用する
TypeScriptのコンパイラは、型推論と呼ばれる機能を使用して、ジェネリック型パラメータの型を自動的に推論することができます。
function firstElement<T>(array: T[]): T {
if (array.length === 0) {
throw new Error('配列が空です');
}
return array[0];
}
const numbers = [1, 2, 3];
const firstNumber = firstElement(numbers); // number 型であることが自動的に推論される
console.log(firstNumber); // 1 を出力
const strings = ['Hello', 'World', 'JavaScript'];
const firstString = firstElement(strings); // string 型であることが自動的に推論される
console.log(firstString); // 'Hello' を出力
typescript